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テンションとは何か — 9・11・13、ジャズ和声の虹

第5回では、トライアドの上に3度をもう一段積んでセブンスコードを作り ました。ところがふと疑問がわきます。3度を積むのを7度で止めなければいけないのでしょうか。もう一段、 さらにもう一段積むと何が起きるのでしょう。積み上げていった先に現れるもの — 今日の主役、 テンション(9・11・13)です。

なぜ7度で止めないのか

積み方は今までと同じ。ド-ミ-ソ-シ(セブンスコード)の上に一つ飛ばしで音を重ねていくと、レ・ファ・ラが 順に上がってきます。でもこのレは2度なのに、なぜ9と呼ぶのでしょう。コードはすでに7度まで使い切って いるので、その上の音はオクターブを越えた位置として数えます。2度がオクターブ上へ行くと9度、4度は 11度、6度は13度。8・10・12を飛ばすのは、その席がすでに根音・3度・5度だからです。

つまりテンションは新しく発明した音ではありません。スケールの中にあった音を、オクターブ上でもう一度 出会うだけのこと。ただしコードの一番上、根音から遠く離れた席に置かれるので、和音全体にほのかな 色合いをまとわせるのです。

9・11・13、オクターブ上の色

層を一段ずつ上げてみると、色がどう広がるか聞こえます。心地よいCmaj7に9(レ)を加えたCmaj9は、 ひときわ華やかで開けた響き。そこに13(ラ)まで乗せたCmaj13は色が満開の — シティポップやジャズ バラードの、あのきらめくコードです。セブンスコードが「明るい/暗い」の上に乗せた微妙なニュアンス だったなら、テンションはその上で彩度を一段ずつ上げる絵の具です。

どんな音でも乗せていい? — アヴォイド・ノート

とはいえ、どんなテンションも好き放題に乗せられるわけではありません。メジャーコードに自然な11(ファ)を 乗せると、どこか濁ってぶつかります。ファが3度のミと半音差で隣り合い、コードの明るい表情を曇らせる からです。こうして色を汚してしまう音をアヴォイド・ノート(避ける音)と呼びます。だからメジャー コードでは普通、11を省略するか、半音上げた#11に変えて使います。(マイナーコードやドミナント コードでは11の事情がまた違います — コードごとに似合うテンションが決まっているわけです。)

テンションは不協和ではなく調味料

ここでよくある誤解をひとつ解きます。テンションは「不協和音」ではなく、調味料に近いのです。似合う テンションを選んで適量を乗せれば、響きは騒がしくなるのではなく、色がもう一枚重なるだけ。 私たちが 好きなバラードのしっとり感、ジャズの洗練、R&Bの気だるさは、その多くがこのテンションから生まれます。 純色(トライアド)がクレヨン1本なら、テンションは同じ絵を水彩に変える絵の具です。

コードネームの読み方、もう一段

第5回のルールに、テンションを乗せる表記を足すだけです。Cmaj9メジャー9、数字だけのC13ドミナント13、そして3度を保ったまま色だけ加えたいときはCadd9のように書きます。アヴォイドを 避けて上げた音はCmaj7(#11)のように括弧で記します。譜面でDm9 - G13 - Cmaj9という行に出会えば、 その中がどれだけ華やかに塗られているかまで読めるはずです。

🎹虹を耳で — Theory Labの「テンション」レッスンへ

テンションはコードの5層目から始まる色の世界です。トライアドの明るい/暗い、セブンスのニュアンスの上に 9・11・13が彩度を加え、アヴォイドさえ避ければその色は不協和ではなく調味料になります。次回は少し向きを 変えて、3度をまるごと取り払うとどんな響きになるのか — susとaddの宙に浮いた和音へ向かいます。 コードが初めての方は第3回:コードとは何か第5回:セブンスコードとはからどうぞ。