ジャズの歴史② スイングの時代 — アメリカが踊る (1930s–1940s)
1930年代、ジャズは最も大衆的な音楽になります。大恐慌の苦しさの中、人々はダンスホールに押し寄せ、 ビッグバンドの陽気なスイングに身を委ねました。ラジオから流れるジャズが、時代の音そのものでした。
ビッグバンドとスイング
ビッグバンドはサックス・トランペット・トロンボーンの各セクションとリズム隊からなる10人以上の大編成。 編曲者がセクション同士で旋律を受け渡し、その上でソロが輝きます。核心はやはりスイング — 思わず 身体が動くあのリズム。デューク・エリントンの曲名が時代を定義しました——「スイングが無ければ意味がない」。
時代の巨匠たち
- デューク・エリントン: ビッグバンドを「オーケストラの作曲」の域へ高めた巨匠。ジャズを芸術へ引き上げた人物。
- カウント・ベイシー: カンザスシティ特有の軽く粘るスイング。少なく弾いて深く揺らすリズムの美学。
- ベニー・グッドマン: 「スイングの王」。人種を超えた編成でも大きな意味を持ちました。
- ビリー・ホリデイ / エラ・フィッツジェラルド: ジャズ・ヴォーカルの二つの頂点 — 感情の深さと即興の自由。
必聴曲
Duke Ellington – "It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)" (1932)
「スイング」という語を題名に刻んだ宣言のような曲。アイヴィ・アンダーソンの歌声が時代を開く。
Count Basie – "One O'Clock Jump" (1937)
ベイシー楽団の象徴。リフ(短い反復句)が層を成して高まる、カンザスシティ・スイングの精髄。
Benny Goodman – "Sing, Sing, Sing" (1938, カーネギーホール)
ジーン・クルーパの爆発的なドラムが牽引する、スイング時代を丸ごと象徴するライブ。
Coleman Hawkins – "Body and Soul" (1939)
旋律をほぼ捨て、和声の上を自由に歌うテナー・ソロ — 来たる「即興の芸術」を予告する。
Billie Holiday – "Strange Fruit" (1939)
人種暴力(リンチ)を告発した、大衆音楽史上もっとも重い歌のひとつ。ジャズが社会へ声を上げた瞬間。
皆が踊っていたその頃、数人の若い奏者たちが「もうダンス用の音楽だけは嫌だ」と小さなクラブに集い始めます。 革命が始まります。