ヒップホップの歴史② オールドスクールからブーンバップへ (1980s)
1980年代、ヒップホップは路上を離れて本物の「産業」になります。決め手は二つ。ひとつはドラムマシン、 もうひとつはサンプラー。機械でビートを打ち込み、古いレコードを切り貼りし始めた瞬間、ヒップホップは 無限の音の倉庫を手に入れました。そしてロックと手を組み、お茶の間まで攻め込んだんです。
何が変わったか
- 機械がビートを作る: ローランド808やサンプラーで、誰でもスタジオ級のビートを打てるように。あの重く硬いドラム、いわゆる「ブーンバップ」の骨格はここから生まれました。
- ロックとのクロスオーバー: Run-DMCがエアロスミスと組むと、MTVがヒップホップを流し始めました。街の音楽が国民の音楽になった瞬間です。
- ラップが芸術になる: ラキームのようなMCが現れ、ライムは格段に複雑で精密に。「何を言うか」と同じくらい「どう言うか」が重要になりました。
革命家たち
- Run-DMC: アディダスのスニーカーに黒い革。ヒップホップをスタジアム級に育てた初のスーパースター。
- Rick Rubin & Def Jam: ロックギターとラップを恐れず溶接したプロデューサーと伝説のレーベル。ヒップホップをメインストリームへ押し上げました。
- Rakim: ライムとフロウを「教科書」の域に高めた天才。以後すべてのMCの基準になりました。
- Beastie Boys: パンクバンド出身の白人3人組。ヒップホップの境界を愉快に押し広げました。
必聴曲
Run-DMC – "Walk This Way" (ft. Aerosmith) (1986)
ラップとロックを一曲に叩き込んだ歴史的コラボ。このMV一発でヒップホップはMTVを突破しました。
こう聴いてみて: ロックのギターリフとラップが、文字どおり壁を壊して出会う構成。二つの世界が融合する快感を味わって。
Beastie Boys – "(You Gotta) Fight For Your Right (To Party)" (1986)
騒がしく愉快なパーティ・アンセム。ヒップホップってここまで自由でいいんだ、と思わせる一曲。
こう聴いてみて: ロックのように打ち鳴らすドラムの上で、3人が交互に叫ぶエネルギー。とにかく一緒に叫べばOK。
Eric B. & Rakim – "Paid in Full" (1987)
ブーンバップの原型のような曲。ラキームの落ち着いて隙のないラップは、今聴いても鳥肌です。
こう聴いてみて: 焦らない余裕のフロウ。拍で遊ぶラキームの「余白」に耳を澄ませてみて。
LL Cool J – "Mama Said Knock You Out" (1990)
「もう終わった」という声に正面からパンチを返した曲。攻撃的なエネルギーの頂点です。
こう聴いてみて: 「Don't call it a comeback!」で弾ける導入。自信が音になって爆発する瞬間です。
道具も武器も揃ったヒップホップは、ここから爆発的に多様化します。次回は、歌詞とサウンドが芸術の域に達した 時代 —「ゴールデン・エイジ」へ進みましょう。