コードとは何か — 三つの音が出会い「色」になる
第1回で音がどこから来たのか、第2回で二つの音の 距離(音程)を見ました。今度はもう一歩 — 音を同時に複数押してみます。メロディが一音ずつ続く 「線」なら、コードは複数の音が重なって生まれる「色」です。この記事では、コードがどう作られ、なぜ あるコードは明るく、あるコードは暗く、あるいは不安に聞こえるのかを最初から押さえます。
なぜ音を重ねて積むのか
メロディは時間に沿って流れる一本の線です。ところが二つ三つの音を同時に鳴らすと何が起きるで しょう。第1回で見た倍音たちが混ざり合い、一音だけでは出せない新しい響き — ハーモニー(和声)が生まれます。同じ「ド」でも、どんな音と一緒に積むかで安らいだり緊張したり する。その「一緒に積んだ一かたまり」こそコードです。
なぜ3度ずつ積むのか
コードの作り方は意外なほど規則的です。基準になる音(ルート=根音)を決め、一つ飛ばして(3度上) 音を乗せ、そこからまた一つ飛ばして音を乗せる。ドから始めればド・ミ・ソですね。
なぜよりによって3度なのでしょう。すぐ隣の音(2度)を重ねると、第2回で 見たようにぶつかって濁ります。一方3度はよく溶け合う協和音程なので、重ねても濁りません。だから一つ おきに積むのです。こうして作った三音のコードを三和音(トライアド)と呼び、三つの音は下から ルート・3度・5度といいます。
明るいコードと暗いコード
ここで第2回の「明暗のスイッチ」が再登場します。ド・ミ・ソの真ん中の 「ミ」を半音だけ下げてみてください(ド・ミ♭・ソ)。さっきまで輝いていたコードが急にしょんぼりします。
つまりルートから真ん中の音までが長3度なら明るいメジャーコード、短3度なら暗いマイナーコード。 一番上の5度はそのままで、真ん中の半音の差がコード全体の感情を変えます。コードの表情を決めるのは、 いつも真ん中の3度なのです。
緊張の色 — ディミニッシュとオーギュメント
真ん中だけでなく一番上の5度まで動かすと、さらに特別な色が出ます。5度を半音下げると短3度が二つ 積まれた減三和音(ディミニッシュ) — ひやひやと不安な、ホラー映画のような響きです。5度を半音 上げると長3度が二つ積まれた増三和音(オーギュメント) — どこにも着地しない、夢見心地で 浮いたような響きになります。
こうしてメジャー・マイナー・ディミニッシュ・オーギュメントの四つが三和音の基本の色です。百回 読むより一度聴くのが早いので、四つのコードを並べて聴き、その表情の違いを感じてみてください。
コードネームの読み方
譜面やコード表で出会う C・Am・G といった記号は、実は「この音をこう積め」を縮めたレシピです。
大文字のアルファベットはルートの音名(C=ド、D=レ、E=ミ、F=ファ、G=ソ、A=ラ、B=シ)で、後ろに
何も付かなければメジャー。ルートの後ろに小さな m が付けばマイナー(Am=ラのマイナー)、
dim・aug は減・増コードです。C7 のように数字が付くのは音をさらに積んだもので、その話は次の
機会に。この記号さえ読めれば、たいていの譜面の伴奏は追って弾けます。
体験 — 同じメロディ、違うコード
コードが本当に「色」だと確かめる、いちばんいい方法があります。まったく同じメロディの下に敷く コードだけを変えてみるのです。同じ旋律が明るくなったり、切なくなったり、ジャズのように洗練されたり する。メロディはそのままなのに、コードが雰囲気をまるごと着替えさせるのを聴いてみてください。
コード一つは一枚の「色」です。では、その色を順番に並べたらどうなるでしょう。止まった絵が動き出し、 物語になります。次の第4回では、コードが家を離れてまた帰ってくる コード進行を扱います。まだ音と音程の回を読んでいない方は、第1回と 第2回から順にどうぞ。