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コード進行とは — 家を離れ、また帰ってくる物語

第3回でコード一つがどう「色」を出すのか見ました。ところがコードは一人でいる ときより、列をなして動くときに本当の力を出します。コード一つが止まった写真なら、コードを順番に つないだコード進行は物語です。この記事では、コードがなぜ・どう動いて感情を生むのか — 家を離れ、 また帰ってくるその旅を最初からたどります。

一つのスケールから生まれたコードの家族

まず疑問を一つ。一曲にどんなコードでも好きに使っていいのでしょうか。たいていは違います。多くの曲は 一つのスケールから生まれたコードたちでできています。Cメジャースケール(ドレミファソラシ)の各音の 上に第3回のように3度ずつ積むと、C・Dm・Em・F・G・Am・Bdim の七つのコードが 出てきます。

面白いのは、場所ごとに明るさ暗さが決まることです。1・4・5番目はメジャー、2・3・6番目はマイナー、 7番目はディミニッシュ。だから音楽家はコードを名前の代わりにローマ数字で呼ぶことがあります — I, ii, iii, IV, V, vi, vii°。こうすればどの調に移しても「関係」がそのまま見えるからです。この七つが 一曲を作るコードの家族です。

三つの役割 — 家・離れ・緊張

七つのコードにはそれぞれ役目があり、核心は三つです。I(トニック)は家 — 最も安定し、ここで終われば 「着いた」と感じるコード。IV(サブドミナント)は離れ — 家を出て少し広がる感じ。V(ドミナント)は 緊張 — 早く家に帰りたくてうずうずするコードです。

なぜよりによってVがそれほど家(I)へ引っぱるのでしょう。Vの中には主音のすぐ半音下の音(導音)と、 第2回で出会った不安なトライトーンが隠れています。この張りつめがIへほどける 瞬間、「ああ、解決した」という快感が生まれます。家を離れ(IV)緊張して(V)家に帰る(I)— この三拍子が 西洋音楽の基本文法です。

世界を支配する進行たち

これらの役割をつなぐと、どこでも聞こえる進行になります。家・離れ・緊張をそのまま並べたI-IV-Vは、 童謡からロックンロールまで数えきれない曲の骨格です。とくにこの三つのコードを十二小節に配置した 12小節ブルースは、ブルース・ロック・ジャズの共通の母語といえます。まずこの骨格を耳に刻んでみて ください。

終止(カデンツ) — 音楽の句読点

言葉に句点や読点があるように、進行にもフレーズを結ぶやり方 — 終止(カデンツ)があります。 V-Iは完全終止、きっぱりした句点です。フレーズがVで止まれば半終止、何か続きそうな読点。 IV-Iは変格終止、賛美歌の終わりの「アーメン」に聞こえる柔らかな結びです。Vのあと家(I)ではない 別のコードへ逸れれば偽終止、「あれ、終わらない?」という意外性です。進行がどこで「結ばれる」のかを 耳で聞き分けてみてください。

体験 — たった四つのコードで何十曲

コード進行の力をいちばん実感させてくれる例があります。I-V-vi-IV、いわゆる「ポップの4コード」は、 ここ数十年のヒット曲数百曲に共通する背骨です。四つのコードをぐるぐる回しているだけなのに、まるで別の 曲に聞こえる魔法を、下の動画が愉快に証明します。

ここまでが和声の基礎、四つの歩みでした。第1回で音がどこから来たのか、 第2回で二つの音の距離、第3回で三つの音が作る色、 そして今回、その色が動いて作る物語まで。ここから先は、7thコードやテンション、転調のように色をさらに 豊かにする道具が待っています。でも今日のI-IV-Vと終止を耳に入れるだけでも、好きな曲のコードがなぜ そう流れるのかが少しずつ聞こえ始めるはずです。